NK活性の加齢による変動

多田・奥村:老化と免疫,現代化学11号(1984)

1.がんの予防と治療に腸内フローラー(腸内細菌)に注目しよう
私達のお腹には100兆個もの腸内細菌が住み着いているとされております。
腸内細菌には、ビフィーズス菌、乳酸菌と言った善玉菌とウエルシュ菌、大腸菌、ブドウ球菌と言った悪玉菌があります。腸内細菌は加齢、ストレス、偏った食事、薬(抗生物質、消炎剤,下剤、etc)でバランスが崩れ、善玉菌が減少します。善玉菌は私達の身体に備わっている”自然治癒力”つまり免疫と深く係わっており、私達はこの腸内細菌のお陰で生きてゆけると言っても過言ではありません。成人のがんは加齢に伴う免疫低下が原因と考えられます。私達の身体からは、毎日3000〜5000個のがん細胞が発生していると言われておりますが、これらのがん細胞をナチュラルキラー細胞(NK細胞)が片っ端から食い尽くしてくれる為、幸いがんにならずに済んでいるのです。このNK細胞の活性は加齢や生活習慣により変動することが判っております。(左図)
がんの殺し屋細胞”NK細胞”の活性を高めておけば、がんの予防が期待できる事、或いはがんの再発、転移が抑えられると考えられます。善玉菌が増えればNK細胞の活性が高まる事は証明されております。
善玉菌を増やす事がとても大切な訳がお判り戴けると思います。善玉菌は次の様な生活習慣と食事で増える事が判っています。
 1) 適度な運動をする。 ストレスを発散させる。
 2) 充分な睡眠をとる。食物繊維の多いバランスのとれた食事。
 3) タバコを吸わない。過労にならぬようにする。
 4) 食事は和食が良い。(ご飯(米)が良い)。大豆製品を食べよう。
 5) 納豆を食べる。(ワーファリンを服用している方は食べられない)。
 6) 牛乳、ヨーグルト(乳酸菌)、ヤクルトを飲もう。ヤクルト菌は胃酸に晒されても死滅しないとされている。乳酸菌は胃酸で死滅するのもある。ヤクルトで膀胱がんの再発抑制効果が見られている。
 7) オリゴ糖を食べよう。オリゴ糖は玉ねぎ、ビート、蜂蜜、アスパラカス、ゴボウ等に含まれている。また、1本500円位で売られてもいる。代表的な善玉菌のビフィーズス菌は乳頭、オリゴ糖で増殖する。
 8) 抗生物質で善玉菌が激減する。抗生物質を服用する時は上記の物を積極的に摂ろう。
 9) 食物繊維の多い物を食べよう:米のご飯、果物、野菜、豆類等
10) 浄水器を利用し、なるべく塩素を含まない水を飲む。善玉菌は塩素に弱く、悪玉菌が増える。

腸管は自律神経により調節されております。カリカリしたり、イライラしたり、また精神的に落ち込みますと、腸管環境が悪化し、悪玉菌が増えます。
リラックスする事、心地よい音楽を聴く、歌を唱う等、副交感神経が刺激されるような生活様式が免疫を高めます。この事は現在がんと闘っている方には特に大切な事です。
進行がんは手術や抗がん剤治療、放射線治療と言ったスタンダードな治療だけでは、なかなか克服出来ません。
出来るだけお金をかけぬようにしながら、自然治癒力が高まるような様々な取り組みが必要です。

2.早期がんは治る
50歳代は、生活習慣病ばかりでなく、がんをはじめとした、重い病気にかかりやすく、統計的にも死亡の大きなピークがあります。健康を過信せず、健康管理に心することと、質の高い検診を受けるようにしましょう。

内視鏡写真は自覚症状はありませんが、検査で発見された胃がんと大腸がん症例です。このような早期がんは、がんと言っても心配なく治ってくれます。
 早期大腸がん    早期胃がん

3.前立腺がんの腫瘍マーカーPSAは早期発見にとても有効

日本でも前立腺がんが最近、急速に増加しております。
前立腺がんの腫瘍マーカーPSAは鋭敏で早期がんが発見できます。50歳を過ぎた方は、誕生日にPSAの検査を受けていれば、先ず前立腺がんで死ぬことはないと思われます。
人間ドックで色々な腫瘍マーカーを調べている方がおられますが、腫瘍マーカーが高くなっていて、それが、がんに拠るものとしますと、多くはそのがんの治癒は期待できません。つまり前立腺がん以外の腫瘍マーカーでは早期発見出来ないと考えてよいのです。
天皇陛下もご自身のがんをPSAで発見されました。
平成15年2月23日の新聞で知ったのですが、歌手の三波春夫さんは前立腺がんで亡くなられ、長女の方が”三波春夫、PSAネットワーク”の代表になり、前立腺がんの早期発見、治療を呼びかけておられます。
このホームページをごらんになった方で、まだ検査の受けたことのない50歳以上の方が居られましたら、PSAの検診を受けるよう、お奨め致します。

4.ピロリ菌
  ピロリ菌はすっかり有名になりましたので知っている方が多いと思われます。
胃液は極めて強酸ですので、これまでは胃の中で生息出来る菌がいるとは常識的には考えられない事でした(結核菌は好酸菌で胃の中でも生息出来ます)。所が1982年オーストラリアのマーシャルという研究者が胃の中にピロリ菌が生息している事を世界で始めて発見し大変な話題になったのです。ピロリ菌はどのようにして胃の中に入り、生きているのでしょうか?。 ピロリ菌は胃の中にしかいません。そしてピロリ菌はどのような病気に係っているのでしょうか?。
最近になり少しずつピロリ菌の事が解明されて来ました。その後ピロリ菌の発見者のマーシャルという研究者にノーベル医学賞が与えられました。
  ピロリ菌の除菌前 ピロリ菌除菌後  

どのようにして胃の中に入るのか?
              ピロリ菌は胃がんの原因か?

目本では年齢と共にピロリ菌に感染している人が増え、40歳以上ではおおよそ70‰位の人が感染しているとされております。感染経路は経口感染がほとんどで、家族内での母親から子供への感染(例えば母親が一度口に入れた物を子供に与える)が主とされております。従ってほとんどは子供の時に感染するとされております。
 しかしピロリ菌に感染したからと言って、多くの人が病気になるとは限りません。むしろ何も異常を来たさず一生を終える方のほうが多いと言えます。一方、ピロリ菌に感染している方は胃がんの発生率が高いとするデータもあり、WHOではピロリ菌を胃がんの原因の一つと認定しております。ピロリ菌が胃がんの原因になっていると言えるかどうか?の臨床研究が約10年程前、国立ガンセンターの先生が中心になり、全国規模で計画された事があります。
胃の検査時、ピロリ菌が陽性(ピロリ菌の感染を受けている入)の健常者を、1)ピロリ菌を除菌するグループ、2)ピロリ菌を除菌しないグループの2群に分けて、除菌したグループと除菌しなかったグループで数年以上経ってから、胃がんの罹患率に優位差があるかどうかを調べるものです。 しかし全国規模のこの臨床研究は失敗してしまいました。理由にピロリ菌は陽性だが、除菌しないで経過を見る”グループに入った人達が「これでは我々はモルモット扱いではないか!」と言って研究対象から脱落してしまった事でした。臨床研究は、このよ引こ2群こ分けて、優位差を見なければ、信憑性の低い、科学的な根拠の乏しいデーターになってしまいます。臨床研究の難しい所です。ゴキブリがピロリ菌を運んでいる可能性も指摘されておりますので、台所や風呂場は清潔を保ち、ゴキブリの駆除を心掛ける事も大切なことです。

北大教授、浅香先生達の着眼点の素晴らしさ!


早期がんの中でも、特に早期の粘膜内がんというのがあります。内規鏡的にがん病巣部の粘膜を「削ぎ取る」いわゆる『粘膜切除』という手術で治りますので、外科的に胃を切除する必要がありません。熟練した医者は内視鏡でさほど難しくなく、このような早期がんを発見します。
浅香先生たちの研究グループは、このように粘膜切除した早期がん患者さんで、ピロリ菌陽性の患者さんを、1)ピロリ菌を除菌する、2)除菌しないでその後の経過を観察する、の2群に分けて除菌した群と除菌しなかった群の間で、その後の胃がん発生に差が出るかどうか?を調べたのです。
前述の国立ガンセンターが中心になって計画した臨床研究と異なり、既に胃がんに罹患して、きちんとした最新の治療を受けた患者さんですので、患者さんも異論を挟めません。結果は何と除菌しなかった患者さんは除菌した患者さんに比べ、その後の胃がん発生率は3倍も高かった! “との事です。
この事実が判明してから、この研究は急濾終丁として、胃がんの再発予防目的で全員に除菌を行ったとの事でした。素晴らしい着眼点から優れた臨床研究が北海道から発信された事に拍手を送りたいと思います。

検査でピロリ菌が陽性なら除菌を!

これまでのお話でお判りのように、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などは先ずピロリ菌の感染の有無を調べる事が大切です。陽性ならピロリ菌を除菌する必要があります。
除菌されますと、潰瘍病変が再発することはほとんどありません。ピロリ菌が潰瘍の原因となっている事が判らなかった時は、潰瘍は再発を繰り返す為、抗潰瘍薬をなかなか中止出来ませんでした。
最近問題になっている事は、ピロリ菌を除菌する為の抗生剤が効かなくなって、除菌の成功率が60%位にまで低下してしまった事です。
これは除菌に使用される「クラリスロマイシン」という抗生剤にピロリ菌が耐性を獲得してしまった事が原因です。「クラリスロマイシン」で除菌出来ない時は「フラジール」という薬が有効ですので、「クラリスロマイシン」を「フラジール」に換えて除菌をめざします。
ピロリ菌に感染した胃粘膜は萎縮を来たし、この胃粘膜の萎縮部位から胃がんが発生する事が判っております。



ピロリ菌の不思議
(逆流性食道炎と特発性血小板減少症、胃原発の悪性リンパ腫、貧血など)


ピロリ菌が除菌されますと、もう潰瘍の再発のリスクはほとんど無くなり、胃がんのリスクも減りますので、良い事ずくめに思われます。
しかし、何故か除菌後、逆流性食道炎になってしまう方がおられます。
発生頻度は約10%位とされております。どうやらピロリ菌は逆流性食道炎を防ぐ働きもしているようなのです。
逆流性食道炎も苦しいもので、高齢者に多いのですが、何とも不思議な菌と言えます。
ピロリ菌は「特発性血小板減少症」という難病をも引き起こします!
特発性血小板減少症は血小板数が3〜5万/mm立法位にまで減少してしまう血液の難病で致死率も高いのですが、ピロリ菌陽性者でしたら、除菌しますと約50%の方は治ってしまうと言います!。
胃の悪性リンパ腫の一部(モルトリンパ腫)もピロリ菌の除菌だけで70%は治るとされております。
私が経験した「特発性血小板減少症」の1症例と「胃悪性リンパ腫(モルトリンパ腫)」をご紹介します。
 「特有性血小板減少症」の方は72歳の女性で高血圧で外来治療をしている方ですが、直ぐ『青たん』が出来るとの事で血液検査を行ってみました所、血小板が5.4万(正常値:12〜40万)でした(H21/10/21)。
ピロリ菌が陽性であった為、除菌施行。検査の結果、除菌されましたが、H22/01/13の血液検査では血小板は2 1.9万と正常になっておりました!。現在も全く異常はありません。
「胃悪性リンパ腫」の例は68歳女性でH16/08/24多発註胃潰瘍を内視鏡検査で認ましたが、生検で「モルトリンパ腫」と診断されました。ピロリ菌陽性の為、除菌を行いました所、潰瘍は消失、その後、約6年後の現在も再発を認めません。
「胃悪性リンパ腫」ではその他に2例の方がピロリ菌の除菌だけで再発を来たしておりません。
ピロリ菌は胃粘膜の萎縮を来たしますので、『貧血』も起こって来るようです。
今後はもっと多くの病気への関与が解明されるかも知れません。
写真は十二指腸潰瘍に合併した胃ポリープ例ですが、ピロリ菌の除菌を行いました所、その後の内視鏡検査でポリープは消失しておりました。胃の多発性ポリープがピロリ菌の除菌でほとんど消失した症例もあります。







5.痛み止め・解熱剤


歯痛、腰痛、ひざ関節痛などで痛み止めを服用することは、しばしばあります。風邪を引いた時、解熱剤を服用することも珍しくありません。これらの薬は、消炎鎮痛解熱剤と言われております。この薬は胃に大きな負担があり、比較的簡単に胃潰瘍が生じます。高齢者の方は腎臓にも影響を及ぼすことが少なくありません。病院に行きますと処方されることが多い薬ですので、このような副作用があることを知っておきましょう。
内視鏡写真は、歯の痛み止めを服用していて多発性潰瘍が生じ、出血を来たした症例です。2〜3回の服用で潰瘍が出来ることもあります!。リュウマチ以外の痛みには、アセトアミノフェンが副作用が少なくて安全です。
多発性潰瘍による出血塊

6.経鼻内視鏡検査はこれまでの経口内視鏡検査より遙かに苦痛はありません

 我が国ではがんが死因の3割を占め、3人に一人ががんで死亡しております。胃がんば年々減っておりますが、患者数では未だに胃がんが日本人に最も多いがんとなっております。
 胃がんの予防には食生活が大きな役割を果たしているとされております。食生活上の危険因子は1)食塩、2)飲酒、3)焼肉や焼魚の「こげ」があげられます。
また、4)熱すぎるスープやうどん、おかゆ等は胃や食道の粘膜がやけどの状態になり、がんになり易いと言われています。
腹八分目で一日3食、規則正しい食事を、などですが、食事とは関係はありませんが6)ピロリ菌が胃がんの危険因子と言われておりますが、今では北大の浅香先生たちの研究グループ初め、多くの研究者により実証されております。 

がんは早期発見が出来れば怖くありません。

あらゆるがんに共通した事ですが、がんば早期発見しますと、ほとんどは治りますので、とに角、早期発見に努める事が肝要です。
上記の如く、がんにならぬような生活習慣を送る事と、それでも尚がんになる事がおりますがそれは致し方ありません。
 がんの早期発見の為にはやはり健診を受ける以外に方法はありません。眼で見える臓器のがんの早期発見は、健診さえ受けて頂ければ、早期発見は比較的簡単です。胃がんの健診はやはり内視鏡による健診が最も信頼性が高いと言えます。
 しかし胃内視鏡検査を受けた事がある方は、やはり内規鏡検査は『苦しい』ことが検査を敬遠される理由の一つとなっていると考えられます。この『苦しい検査』から解放されたのが『経鼻内視鏡』と言って過言ではありません。字の如くこれまでの「口」から内視鏡を挿入するのではなく、「鼻腔」から挿入する、極めて紬い内視鏡が開発されました。鼻腔の狭い人はこの細い内規鏡で『ロ』から挿入しますが、とに角、内視鏡が細いですので、これまでの内視鏡検査に比べますと、ズーっと楽と、どの患者さんも申されます。

経鼻内視鏡検査では微小は見落とされ易いか?

 検査は楽と言っても、これまでの内視鏡検査に比べ、見落としが多いようであれば、折角検査を受けたのに意味が無くなってしまいます。専門医の間でも『径鼻内視鏡検査はこれまでの経口内規鏡検査に比べ、見落としが多い』と言う意見がありました。 しかし症例を重ねて、「経鼻内視鏡の特性」を知り、検査を行いますと、経口内視鏡検査に比べ、遜色はないと言う意見もあります。大阪赤十字病院消化器科の圓尾 隆典(まるお たかのり)先生はご自身の経験で、早期がん発見率は全く遜色がないと述べておられます。
 私の経験では経鼻無内視鏡はこれまでの経口内視鏡に比べ、電子内規鏡の画像が暗く、見にくい印象でしたが、「ハイビジョン」の画像に変えてからは既存の内視鏡像と全く変わらず、良好に観察出来るようになった感じです。微小がんも1例発見しております。
患者さんの受けも良く、「こんなに楽に検査が出来るのであれば、全く問題ない」と言われる方が多いです。医療機器の開発の進歩に驚かされますが、このような内視鏡が開発されておりますので、皆さんもがんの早期発見の為、50歳を超えたがん年齢の方は是非1年に一回は胃内視鏡検査を受けられる事をお勧めします。
 当院では、最近は患者さんの要望もあり、胃内視鏡検査は苦痛の少ない、『経鼻内視鏡検査』がほとんどです。
胃がん検診は胃のバリュウムX-線検査が行われておりますが、胃の集団検診には見落としの問題が提起されております。東京都がん検診センターの西沢先生、志賀先生らは集団検診者に内視鏡検査を行った所、何と83%の胃がんが見落とされていたと言う!。自らの健康は自らが守ると言う考えが大切です。

.がん検診について

2010/05/29の北海道新に「命をつなぐがん検診」との表題で2010年5月22日に道新ホールで行われたがん検診の大切さについて考えるシンポジュウム「ポジテイブライフとヘルスチェック」の記事が掲載されておりました。
元女子マラソン選手、増田 明美さんと東京の有明がん研究会病院顧問の土屋了介先生(前国立がかセンター病院長)の講演が要約されたものです。
厚労省の「人口動態統計」によりますと、北海道ではがんで亡くなられた方は1975年には6309人、2007年には16488人で、2.6倍の増加との事です。
北海道は全国の中でもがんによる死亡率が最も高い地域の一つとの事です。 日本では高齢化が進み、日本人の2〜3人に一人ががんになると言われております。
がんは早期発見されれば、手術や放射線治療、或いは抗がん剤による化学療法で治癒させる事はそれ程難しいことではありません。(抗がん剤だけで治せるがんは、白血病や悪性リンパ腫など一部のがんに限られます)私も70歳になりましたが、これまで大腸がんと睾丸のがんになりましたが、幸い治っているようです。

がん検診は何故必要か?

がんは進行してしまいますと、手術は不可能になり、放射線治療や化学療法などを行っても治癒が困難となる事が少なくありません。治らないとなれば、残念ながらその方は亡くなられます。従って進行がんで、治療にもかかわらず治らないと言う事は、その人にとっては「死」を意味します。一方、早期発見されれば、治療でほぼ完治します。がん検診の目的は「がんの早期発見」にあります。折角、がん検診を受けたのに「見逃された」のでは何の為の検診だったのか!と言う事になります。
そうなりますと、がん検診の有効性の検証は欠かすことは出来ません!。がん検診の受診率を高める事が喫緊の課題とされている 部分が少なくないのですが、そもそも「そのがん検診」は有効か?は「世界的エビデンス(世界でそのがん検診は有効と認められている)」に基づいたものでなければなりません。
がん検診そのものの有効性が否定されていたり、疑問視されている「がん検診」では、がん検診の受診率を上げても、がんによる死亡率を減らす事は出来ません!。

医療被曝が原因でがんが増加する!

 私は開業するまでは放射線治療の専門医でした。 日本にはCTがやたらに多く、安易に撮影されております。従って日本で毎年発生するがんの何%かは医療被曝が原因ではないか?と考えていたのですが、2004年1月、「ランセット」と言うイギリスの権威ある医学雑誌に、A.・ベリングトンと言う研究者が衝撃的な論文を発表されました。それは「日本の発ガンの4.4%はX線検査による医療被曝が原因」と言うものでした!。
 日本では大病院から小さな診療所までCT装置が導入されており、1990年代から2000年にかけての台数は急カーブで増えております(月刊新医療から)。(1996年には日本には米国の2.6倍のCTがあり、現在はその差はもっと大きいと考えられます)。
2004年の段階では目本にはCTの台数は世界の1/3が集中しているとされ、CT検査による被爆線量も突出して多いと言われております!。
一回のCT検査で被爆する線量は通常の胸部X-線撮影の200〜400倍とされております。確かにCTは情報量の多い、診断価値の高い検査ではありますが、被曝線量が多い事を知っておく必要があります。
 がん検診が目的の医療被曝でがんになったのではたまりません。ほとんどの医師がこの事に触れませんので、患者さん自らが自己防衛的に賢くならなければなりません。
 増田 明美さんはシンポジュウムで述べておられますが、ご主人と一緒に人間ドックとPET検診を毎年受けておられると言う!。PET検診は金額が高い話をしておられますが、そもそも「がん検診」としてこの検診は有効なのか?こそ問題です。良心的医師であればこのような検診は決して薦めないはずです。
 PET−CTによるがん検診を毎年受けているとしますと、医療被曝線量は無視出来ない線量です!。 PET検診でのがん発見の限界と、医療被曝線量の問題がPET−CT検査にはあります。
  PETではガンと炎症の鑑別は出来ません。がん発見の精度を高める目的で高額なPET−CTと言う診断装置が開発されましたが、がん検診の目的でPET-CTを受ける事は賢明とは言えるでしょうか?。
 土屋先生は、「胃がん」や「肝臓がん」が見つかった時、PET検査は転移の有無(転移の発見)を知る事には威力を発揮すると述べておられます。
 しかしがんは一般的には、転移が見つかれば、『助からない』事が判りますが、転移が早く見つかって良かったとはなりません。転移は早く発見しようが、遅く発見しようが予後はほとんど変わりません。がんは転移が起これば、余程の例外が無い限り助かりません。「早く発見しても助からないのですから、転移を探す検査」は受けない方が良いと私は何時も患者さんに言っております。
 例外的に大腸がんの肝臓転移は、転移の数が1〜2〜3個位であれば、手術で治る事があります。これはPETなどの検査は必要なく、CTの方が圧倒的に情報量が多いと言えます。
 医療被曝の観点からもPET−C T検査を受けることは賢明とは言えません。(しかし前述の如く、CTは被曝線量が多いですので、やたらに検査を受けるべきではありません)。医療被曝のリスクに関しては、『高木学校医療被曝問題研究グループ』の「受ける?受けない?エックス線 CT検査」、発行:高木学校、発売:七つ森書館を是非ご一読下さい。現在の医療界が抱えている問題が浮き彫りにされております。


がん検診は精度の高い検査法で


1)胃がん検診と大腸がん検診について
 
 現在推奨されているがん検診は図1の内容となっています。
 胃がん検診は「胃のバリュウム検査(X-線検査)、大腸がん検診は「便の潜血検査」となっております。しかし胃のX-線検査はかなりの熟練を要し、見逃しの少ない、診断価値の高い検査は誰もが出来るわけではありません。その結果、検診を受けたにかかわらず、見逃し例が多く、胃がんによる死亡をなかなか減らせないと言う現実があります。
胃内視鏡は機器の改良が目覚しく、経鼻内視鏡は非常に細く、検査の苦痛もこれまでの内規鏡に比べ、かなり少なくて済みます。
50歳以上の方は内規鏡検査を選択するのが賢明と思われます。大腸がんの検診は「便潜血検査」となっておりますが、大腸に進行がんがあっても、20%位は便潜血陰性となってしまうというデータもあります。
平坦型あるいは陥凹型早期がんでは便潜血はほとんど陰性となってしまいます。
食事の欧米型に伴い、大腸がんは増加しており、男女とも大腸がんががん死亡の第一位になると考えられております。
便潜血検査はしないよりした方がましですが、「便潜血検査で陰性」は大腸がんが出来ていない事を意味しておりません。
「便潜血陽性」に拘わらず、精密検査の受診率が低い事が問題になっておりますが、『便潜血検査』に頼っておりますと、取り返しの付かない事になりかねません。
2010年6月7日の朝日新聞の夕刊に次のような記事が掲載されておりました。
イギリスの臨床研究ですが、55歳〜64歳の男女を1)直腸からS状結腸まで一回だけ内視鏡検査を行ったグループ6万人と、2)11万人には内規鏡検査を行わず、約11年間追跡調査をした結果、年間10万人当たりの大腸がん全体の死亡率は、検診群が30で、非検診群の44より31%低かったとの事です(ランセットの5月号に掲載とあります)。
たった一回のS状結腸までの内視鏡検査で、これ程の効果があるとは驚きです。とにかく大腸内視鏡検査は苦痛が大きいと考えておられる方が多いようですが、10分位で全大腸内視鏡検査は済ませることが出来ます。
 私の知人で「便潜血検査」を毎年受け、陰性故いくら勧めても大腸内視鏡検査を受けず、初めて潜血が陽性になった為、内規鏡検査を受けに来られた方がおられます。
進行大腸がんが見つかり、すでに肝臓に転移を来たしており、残念ながら亡くなられました。
「使潜血検査」は大腸がん検診として有効とされておりますが、このような例は決して少なくありません。
自分の健康は自分で守るという意識が大切です。
相談出来る家庭医を持ち、最も有効と考えられる検査法で検査を受ける事が大切です。



2)乳がん検診について

目本における乳がん罹患率は増えており、2005年には罹患数は約4万8000人で、25年前の2.5倍との事です。欧米では約8人に一人乳がんにかかると言われておりますが、目本では20人に一人の割合とされております。年代では30台後半から発生率が増加し、45歳〜50歳にピークがあるとされております。
40歳台で乳腺の発達している方は、マンモグラフィーは効果を発揮しないとされており、超音波診断がより有効とされております。いわゆるゼロ期の非浸潤ガンの発見率のアップはマンモグラフィー検診のお陰とされておりますが、欧米の検診率が70〜80%であるのに比べ、目本の検診率は12〜13%に過ぎないと言う。検診率を高めると、乳がんによる死亡率の低下が期待出来るとされており、厚労省が40歳以上の女性に無料クーポン券を配布して2年に一回のマンモグラフィーを受けるよう呼びかけておりますので、検診率アップの効果が出ているようです。
 しかし乳がん検診の有効性を疑問とする論文もあります(ノルウエーとスウェーデンでの全国規模の検診の実施による調査から)。
アメリカの乳がん検診ガイドライン:米国予防医学作業部会は「50歳以下の女性に対する2年ごとのマンモグラフィー検診は利益と害について患者の価値観をも含めた個人的背景を考慮して、個人的に行うべき」と述べております。
いずれにしても、マンモグラフィーに上る被曝練量は少ないとは言え、乳房は放射線感受性が強い(放射練被曝でがんになり易い)組織とされておりますので、検診は2年に一回が望ましく、毎年受ける事は賢明ではありません。
残念な事ですが、北海道では対がん協会などでも毎年の検診を薦めております。毎年のマンモグラフィーを薦める施設は敬遠した方が賢明です。
もう一つ大切な事は、乳がん検診は子宮がん検診と一緒に婦人科でも行っておりますが、乳がん検診はかなりの熟練度が要求されます。大多数の婦人医はその上うなトレイニングを受けているとは考えられません。誤診される危険が大きい為、乳がん検診は
乳腺外科か放射練科のマンモグラフィーの専門医の診察を受けるべきです。婦人科では決して受けない事です。

3)肺がん検診:残念ながら有効性は証明されておりません。

4)子宮がんの予防ワクチンと検診について

子宮頚部がんば「パピローマウイルス」による感染が原因となっている事が判っております。性行為感染症ですので、若い女性ほど感染のリスクは高く、20台、30台で子宮頚部ガンに罹る人が少なくないとされております。 子宮頚がんには「ワクチン」が開発されており、小6から中1の女性に横断的に接種しますと、約7割の女性は子宮頚部がんにならぬとされております!。検診を受ける事も大切ですが、ワクチンで予防する事が最も賢明です。

 
          
 
図-1   現在推奨されているがん検診
対象臓器  推奨されている
検査方法
 
対象と適切な
受診間隔
 
 道内の受診率(%)
(2008年)
 胃  胃X線  40歳以上の男女
年に1回
 11.8
 子宮頸部  細胞診  20歳以上の女性
2年に1回
 28.8
 乳房  視触診とマンモ
グラフィ(乳房X線)
の併用
40歳以上の女性
2年に1回
 22.5
 胸部X線と喀痰検査
(喫煙者のみ)の併用
 40歳以上の男女
年に1回
 11.8
 大腸  便潜血検査  40歳以上の男女
年に1回
 13.7
(国立がんセンター「がん検診読本」2006、受診率は厚労省調べ)

8. 私達の体に大切なコレステロールのお話

 飽食に運動不足も加わり肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症、痛風等のいわゆる生活習慣病が大きな問題になっております。コレステロールの薬を服用している方もおられる事と思われます。
 コレステロールは動脈硬化の原因とされ、とかく悪玉の代名詞のような汚名を着せられておりますが、実はコレステロールは生命維持に欠かすことが出来ぬほど体にとても大切なものなのです。コレステロールは私達の体でどの様な役割を果たしているのでしょうか?。

コレステロールの役割

コレステロールは私達の体で以下のような大切な役割を担っております。
1)細胞の膜を構成する重要な成分で、私達の体の細胞、神経、血管、筋肉、臓器などに欠かす事の出来ない原料となっております。
2)生命維持に不可欠な副腎皮質ホルモン(糖質コルチコイド、電解質コルチコイド)の原料です。このホルモンがなければ、私達は生きてゆけません。
3)女性ホルモン、男性ホルモンの原料です。
4)消化を助ける胆汁の原料でもあり、ビタミンDの原料にもなっております。
コレステロールが高いと動脈硬化による心筋梗塞、脳梗塞が心配とされておりすが、少ないとどうなるのでしょうか?。血管や組織がもろくなり、脳出血などが起こり易くなると考えられます。またコレステロールの低下は免疫の低下を来たす事がわかっております。免疫が低下しますと、感染症、やがんに罹り易くなります。


感染症、がんの抑制に大切なコレステロール


 私達の体は数十兆個の細胞からなっているとされておりますが、この細胞は日々新陳代謝を繰り返して、古い細胞は脱落し新しい細胞に置き換わっております。実はこの過程で毎日私達の体から3000〜5000個のがん細胞が出来ているとされておりますが、多くの方が幸いがんにならずに済むのは、がん細胞を喰い殺してくれるNK細胞のお陰である事は先に述べました。
 この防御機構は免疫監視機構と呼ばれておりますが、この細胞はウイルスや細菌からも身を守ってくれるとても大切な細胞でもあります。コレステロールが低下しますと、免疫が低下する事が判っておりますが、実はコレステロールの低下により、この大切な“NK細胞の活性が下がる”可能性かあり、この結果、肺炎などの感染症に罹り易くなること、がんになる危険が高まる事が想定されます。この様にコレステローロ値が低いのは必ずしも安心とは言えず、かえって危険とも言えるのです。この事を物語る疫学調査、臨床研究があります。
旧万有製薬が関発したコレステロール低下薬で「リポバス」と言う良い薬があります。この「リポバス」を服用した、日本で始めての大規模臨床試験と言われている臨床研究です(J−LITTと言われております)。かつてはコレステロールが220mg/d1を超えると「高コレステロール血症」と診断されて、「リポバス」などのコレステロール低下薬が処方されておりました。解析対象は約51000人でこの内、36900人が6年間追跡調査された結果とされております。

総コレステロールと死因の関係を右図に示します。この図からも明らかなように死亡率が最も高いのはコレステロール値が180mg/d1未満のグループで240〜280mg/d1のグループが死亡率は少なく、死因を見ますと「がん」はコレステロール値と逆相関(コレステロールが低いほどがん死が多く、高いグループほどがん死は少ない)している事が判ります。
 本研究ではガンになった人は調査対象からあらかじめ除外されております。コレステロールは血管の膜の重要な成分ですが、コレステロールが低い人は(勿論血圧が重要因子ではありますが)脳出血が多い事が判っております。

 最近のデーターでは高齢者で低栄養(アルブミンの低い人、コレステロールの低い人)の人が増え、この結果「脳出血」が増加しているとされております。肉、魚、卵などの蛋白質をシッカリ摂る事が大切です。
これらの食材には当然コレステロールも含まれておりまので、アルブミン値が高くなれば、コレステロール値も高くなります。生活習慣病の予防の観点から、国がメタボ健診を始めました。メタボを満たす必須の基準に腹囲が入っておりますので、「肥満は悪」と取られがちですが、催かに「肥りすぎ」は良くありませんが、『小太りの人が最も長生き』と言う事実もあります。体重と死亡の関係はコレステロール値と死亡の関係と同じでU字型となっております。
バランスの取れた食事で、コレステロールは高めに維持し、少し小太りが健康に良いと言えると思われます。

糖尿病、高血圧、喫煙のない閉経後の女性はコレステロール値が260〜280mg/d1でも安全


 女性では心筋梗塞の発症は男性の3分の1とされております。女性は閉経後、ホルモンの変化によりコレステロールの値が急に高くなります。
 この事が女性の方が男性よりコレステロールの薬を服用している人が多い理由と考えられます。所が、コレステロール低下薬の服用で、心筋梗塞を起した事の無い人が発作抑制に成功したと言う医学的報告はないとされております!。
02年の英国の 「PROSPER」と言う研究で女性だけ取り出して検討した結果と、03年の 「ASCOTLLA」と言うスカンジナビア半島を中心にして行われた研究結果が有名です。 
 この「ASCOTTLLA」と言う研究は高血圧、糖尿病、喫煙等、3つ以上の危険因子を持った、約1000人をコレステロール低下薬を服用した人と「偽薬」を服用した2つのグループに分けて3年余り追跡調査した研究です。
 男性はコレステロール低下薬による予防効果が認められましたが、女性では(コレステロール低下薬による)予防効果は認められませんでした。
 このような事実から、人間ドッグ学会では閉経後の女性のコレステロール低下薬の投薬基準は280mg/d1以上としております。
 糖尿病、高血圧、喫煙などの危険因子のある男性では、コレステロール低下薬の予防効果がありますので、服薬の必要があります。禁煙はもとより、血糖コントロールと血圧を充分にコントロールする事が大切です。